旅行で楽しむ読書~おすすめの本と場面に合わせた選び方~

旅行先だろうと文庫本は手放せないという同士の皆様方へ。
この記事では旅行好きかつ本の虫、1年に最大100冊読む私がこれまでの旅行経験と読書歴から、旅のお供に最適な本の選び方をご紹介します。

本選びに失敗すると、空いた時間に退屈してしまったり、逆にのめりこみすぎて気もそぞろになってしまったりして、たいへん後悔することになります。
賢い本選びをすることで、旅行も読書体験も、有意義なものにしたいですよね。

それでは、楽しい旅行の準備のために、まずは本探しの旅に出てみましょう。


旅行に持っていく本の選び方。場面や気分に合わせて決めよう。

どんな旅行を想定しているかによって選び方は違ってきます。
長期旅行か、短期旅行か、スケジュールは忙しいのか、余裕があるのか。
それぞれに合わせて本を選びましょう。 

私のおすすめは、短編集や、ゆったり読める本、あるいは少々むずかしい小説です。

逆に、目が離せなくなるような冒険活劇や、血なまぐさい世界観のものは、やめておきましょう。

私は、そういった本に没入しすぎて、旅行気分が吹っ飛んだことが何度もあります。
なんともったいない。
せっかくですから旅行をメインに楽しみたいですよね。

旅を充実させるためにも、お供はきちんと選びましょう。

移動中にちょこっと読むなら、短編集を。

電車やバスでの移動中の暇潰しには、短編集がおすすめです。
理由は、すぐに読み終わるので、続きが気がかりになることがなく、観光に集中できるからです。
少ない文字数でストーリーが完結するようになっているため、見事な構成をしている作品が多く、短時間でも十分楽しめます。

以下に例を挙げます。

『蜘蛛の糸・杜子春』芥川龍之介、新潮文庫

芥川龍之介の作品群の中でも、読みやすいものが詰まった短編集です。
童話のような語り口で、さらっと読めるものが多いです。
短いながらも深みがあるのがいいところ。

表題作ほか、「魔術」「トロッコ」などの有名な作品が収録されています。
私は「蜜柑」や「アグニの神」なども印象的だったのでおすすめ。
くりかえし読みたくなるような、心地よくやさしい味わいがします。

所要時間は1時間ほど、総ページ数は128ページです。

『ボッコちゃん』星新一、新潮文庫

ショートショートの才人、星新一の代表作が詰まった一作。
簡素な語り口のSFです。
サッと読めてアッと驚く刺激的な読書体験ができるでしょう。

表題作ほか、「悪魔」「月の光」「変な薬」など興味深い話も多数。
皮肉や風刺が利いていて面白いですよ。
ブラックジョークがお好きな方はぜひ。

所要時間は3時間ほど、総ページ数は365ページです。


長距離移動中や寝る前にまったり読むなら、気軽に読める長編を。

あるていど長時間にわたって読むことを計画しているなら、旅行中のルンルン気分や寝る前のゆったり気分を邪魔しない作品を選びましょう。
興奮しすぎたり眠れなくなったりしては、旅行に支障が出ますからね。
ほっこりリラックスできる雰囲気の小説をおすすめします。

以下は具体例です。

『星の王子さま』サン=テグジュペリ、新潮文庫

世界中で親しまれている名作ですね。
何度読んでも、新しい発見ができる、美しい一冊。
日本語版の原点である岩波書店の内藤訳版が有名ですが、ちかごろでは文庫本の河野訳版も読みやすくて人気です。 

「大切なものは、目に見えない」という言葉が有名ですね。
王子さまにとって大切なもの、それは他のなにものにもかえがたい、尊い存在なのだと分かります。

所要時間は1時間ほど、総ページ数は160ページです。

『西の魔女が死んだ』梨木果歩、新潮文庫

よくおすすめ図書などに挙げられる人気作ですね。
中学校に通えなくなった少女が、おばあちゃんのもとに身を寄せて、生きる自信をつけていく話。
おうちの周りの自然とともに描かれる、ゆったりした生活は、心を和ませてくれます。

魔女とは一体どのようなものなのか、読んで確かめてみてください。
ラストは感動で胸がいっぱいになりますよ。
主人公のまいの成長ぶりにも注目してください。

所要時間は2時間ほど、総ページ数は226ページ。

『たのしいムーミン一家』トーベ・ヤンソン、講談社文庫

ムーミンのシリーズの中では最も読みやすく楽しい作品です。
冬眠から目覚めたムーミンたちは、魔法の帽子を手に入れて、わいわいと遊びまわります。
雲に乗ったりジュースを飲んだり、ピクニックにでかけたり、家がジャングルと化したり、こわい魔物まで登場して、てんやわんやです。

ムーミン谷のみんなはとてもやさしくて寛容。
一緒にたわむれている気分になれて、楽しめます。
私の気にいっているキャラクターはスナフキンで、孤高で自由なところにちょっぴり憧れます。

所要時間は3時間強、総ページ数は304ページ。

普段はしないことに挑戦するなら、古典的名作を。

きっかけがないと手を出しにくい名作がありますよね。
旅行を機に、普段読まないタイプの本はいかがでしょう。
いつもとちがう環境なら、多少むずかしい本でも、けっこうスラスラと読めたりするものです。

「もう読んだ!」という方、たいへん失礼いたしましたが、この記事のどこかに、普段はお読みにならないものが見つかれば幸いです。

『注文の多い料理店』宮沢賢治、新潮文庫

表題作ほか、「どんぐりと山猫」「なめとこ山の熊」などの有名どころ。
それに、「気のいい火山弾」といった変化球まで。
宮沢賢治のすきとおったやさしい心が垣間見えます。

童話集なので手を出しやすいですね。
やや癖がある文体で、オリジナリティにあふれる世界観を楽しめます。
独特の語り口を堪能してください。

所要時間は4時間ほど、総ページ数は432ページ。

『竹取物語』角川ソフィア文庫

古文はもちろん、章ごとに現代語訳や解説までついた、おそろしく分かりやすい竹取物語です。
古文が苦手な人は、現代語訳の部分だけでも読んでみてください。
むずかしい文章に頭をひねる必要もなく、ストーリーラインの純粋なおもしろさや、ユニークなこぼれ話を楽しめます。

茶目っ気のある解説がとっても魅力的。
よく知られた昔話とは一風ちがった、かぐや姫の真の姿が見られますよ。

所要時間は古文を含めても2時間強、総ページ数は254ページ。

『草枕』夏目漱石、小学館文庫

夏目漱石の作品の中では、こむずかしい部類に入ります。
しかしこの版ならば、ふりがなや注釈が見やすく、あまり抵抗なく読めるでしょう。
解説は『神様のカルテ』の著者である夏川草介が担当しています。

さっと目を通すだけでも、流麗な文体に触れることができて、心が洗われますよ。
特に有名な冒頭の文章が印象的で、「とかくに人の世は住みにくい。」の言葉にうんうんとうなずいてしまいます。

所要時間は多く見積もって4時間ほど。総文字数は234ページです。

おもしろおかしく過ごしたいなら、変わり種の小説を。

あまり頭を使わずに、だらだらと読める本は、ちょっとした休憩に適しています。
笑える要素のある作品なら、空き時間も楽しく過ごすことができますね。

以下に、やや変わり種の小説を置いておきます。

『夜のくもざる』村上春樹、新潮文庫

おふざけがはじける、ユーモアたっぷりの掌編集です。
関西弁の一人語りが並べ立てられた「ことわざ」や、理不尽極まりない「牛乳」、謎多きSF「ドーナツ化」などが収録されています。 

村上春樹のつむぎ出す、読みやすいのにわけのわからない言葉の渦に巻き込まれて、どうしようもなく面白くなってしまいますよ。
私は何度か声を出して笑ってしまいました。
楽しいことがお好きなら、ぜひに。

所要時間は2時間強、総ページ数は256ページ。

『頭のうちどころが悪かった熊の話』安東みきえ、新潮文庫

動物たちが主人公の寓話集です。
タイトルからにじみでるシュールさを裏切らない内容ですが、同時に人生のちょっぴり大切なことに気づかせてもらえたりもします。 

クスッと笑えて、心がほわっとほどける、すてきな読み味が魅力です。
私は「ヘビの恩返し」が心に残っています。

所要時間は1時間ほど、総ページ数は139ページ。

『聖なる怠け者の冒険』森見登美彦朝日文庫

京都に表れる謎のヒーローぽんぽこ仮面をめぐる大冒険、のはずなのですが、少し違います。
この長編小説にはある土曜日の全容が描かれています。
が、かんじんの主人公が作中をほとんど寝て過ごしているという挑戦作です。
混沌に満ちた複雑怪奇な一日を、だらだらと読み流してみてはいかがでしょう。

私の感想としては「ナンジャコリャ」であり、読みながら妙に笑えてしまうシーンが多々ありつつも、終始「ナンジャコリャ」でした。面白いキャラクターを挙げるとするならば、ダントツで主人公の小和田君ですね。

所要時間は3時間ほど、総ページ数は367ページ。

まとめ

今回は、「旅行で楽しむ読書」についてご紹介いたしました。 

旅行に持っていく本の選び方。場面や気分に合わせて決めよう。

どんな旅行をしたいかによって、本の選び方は変わってきます。
いずれにせよ、夢中になりすぎないようにご注意を。

移動中にちょこっと読むなら、短編集を。

時間配分のしやすい短編集は、ちょっとしたスキマ時間におすすめ。
気分の切り替えもしやすいです。

長距離移動中や寝る前にまったり読むなら、気軽に読める長編を。

あくまで旅行が主体ですから、読書がメインにならないように。
ゆったりした文体を読み、リラックスして過ごしましょう。

普段はしないことに挑戦するなら、古典的名作を。

ちょっとむずかしいものでも、旅行気分でさらっと読めてしまうことがあります。
名作ゆえに、読んでおいて損は無いです。 

おもしろおかしく過ごしたいなら、変わり種の小説を。

適度にクスッと笑えたり、だらだらと読めたりする小説もおすすめ。
独特のユーモアは、旅のちょっとしたスパイスになります。 

旅行で文庫本を一冊たずさえるときは、どんな旅をしたいかイメージしましょう。
熱中しすぎず、適度に楽しめる文庫本がおすすめです。

よい旅のお供がみつかるといいですね。